AmazonでFBA販売していると、販売データの明細に「プロモーション割引額 配送料」といった項目を見たことがあると思います。
私も最初見たときは「何だこれ?Amazonでプロモーションなんてかけた覚えはないぞ ・・・」と不思議に思いました。
今回は「Amazonプロモーション割引額とは何か?」や「Amazonプロモーション割引額の仕訳」などを解説します。
税務調査で指摘されないための仕訳のやり方もお教えします。
なお、Amazon手数料の「配送料チャージバック」「代引手数料チャージバック」「ギフト包装料返金」について知りたい方も、このページを読めば解決するはずです。
Amazonプロモーション割引額とは?
Amazonのプロモーション割引には2種類のケースがあります。
- 出品者が独自に設定する
- 非プライム会員が2,000円以上購入する
それぞれ解説していきます。
Amazonプロモーション割引 その1:出品者が独自に設定する
1つ目は「出品者が独自に設定する」というケースです。
よくあるのが「2点以上購入すると○○円割引」といったものです。
Amazonセラーセントラルの 在庫タブ>プロモーション管理 から設定ができます。
Amazonプロモーション割引 その2:非プライム会員が2,000円以上購入する
2つ目は「非プライム会員が2,000円以上購入する」というケースです。
Amazonでは購入者が「プライム会員」か「非プライム会員」かによって送料の計算方法が異なります。
- プライム会員・・・購入金額に関係なく送料無料。
- 非プライム会員・・・2,000円以上購入したら送料無料。
ポイントは、同じ「送料無料」でも、実は出品者側から見ると販売データ上は違いがあるという点です。
具体例をお見せします。
プライム会員が購入した場合
これはプライム会員が購入した際の販売データです。
初めから「プロモーション割引額」は0円となっています。(デフォルトで送料無料)
非プライム会員が2,000円以上購入した場合
これは非プライム会員が2,000円以上購入することで送料無料になったケースです。
非プライム会員の場合、
- まず送料がデフォルトでかかる
- さらに、2,000円以上購入した場合のみ「プロモーション割引額」という形でその金額が差し引かれる
という処理がされます。
上の画像でいうと、「その他」の配送料+税(=373円+37円)が「プロモーション割引額」で同じ金額だけ差し引かれています。
FBAで販売していると、自分でプロモーションを設定していなくてもこのようなことが起こります。
Amazonプロモーション割引額の仕訳【2パターン】
Amazonプロモーション割引額の仕訳のやり方は2つ考えられます。
- 「売上割戻(うりあげわりもどし)」とみなす
- 「支払手数料」とみなす
結論としては、税務調査で指摘されにくいのは「支払手数料」を使用する方法です。
それぞれのやり方について、実際の仕訳やメリット・デメリットを説明します。
※税理士・税務官によっても解釈が分かれるので、どちらが絶対正しいというのはありません。こればっかりは自己責任で判断してもらえたらと思います。
仕訳 その1:売上割戻(うりあげわりもどし)とみなす
売上割戻というのは、いわゆる「リベート」や「キックバック」のことです。
売り上げた商品の量に応じて、あらかじめ取り決めておいた割合の金額を一部購入者に戻します。「2個買うと100円引き」といったまとめ買いセールも売上割戻にあたります。
Amazon販売でいえば、「2,000円以上買うと送料無料」という仕組みを売上割戻とみなすことができます。
売上割戻の仕訳
割戻分について売上の逆仕訳を行います。
私も使っている確定申告ツール「マネーフォワード クラウド」の画面だと、次のような仕訳になります。
貸方(右側)
課税事業者or免税事業者にかかわらず、ふつう「税込方式」で記帳するので、配送料(373円)にかかる消費税(37円)も売上高に含めます。
詳しくは下の記事をご覧ください。
» 参考記事:【2019年10月増税対応】Amazon転売(せどり)消費税の仕訳・勘定科目【マネーフォワード確定申告】
借方(左側)
- 貸方(右側):「配送料+税」
- 借方(左側):「プロモーション割引額+税」(売上割戻)
で同じ金額だけ相殺されています。
売上割戻とみなすメリット
メリットは「売上高を低くすることができる」ということです。
売上割戻は、売上高の控除=【収益】の減少です。
年間売上1,000万ぎりぎりの場合、売上割戻で処理することで1000万のラインを超えないように抑えられるかもしれません。
※年間の売上が1,000万を超えるor超えないで、翌々年度に消費税を納税する義務があるorないが決まります。
» 参考記事:【2019年10月増税対応】Amazon転売(せどり)消費税の仕訳・勘定科目【マネーフォワード確定申告】
売上割戻とみなすデメリット
デメリットとしては2つ考えられます。
- 税務調査で指摘される可能性がある
- 金融機関から融資を受けにくくなる
税務官によっては、Amazonプロモーション割引額を「売上割戻」と解釈してくれないケースがありえます。
商品代金を割り引くのは「割戻」だけど、送料分をタダにすることで売れやすくするのは「プロモーション」なんだから費用として計上すべきだ、という考えです。(「代引手数料チャージバック」や「ギフト包装料返金」も同様に売上割戻と認められないかも)
売上がぎりぎり1,000万未満の事業者に対して指摘することで、数字が1,000万を超えるように修正して消費税を徴収する、といったことは可能性として考えられます。
ただし、おそらく徴収できても数十万円なので税務官にとって旨味は少ないです。他の問題を指摘するついでならあるかもしれません。
もし指摘されても上述の説明をキチンとできるのであれば、売上割戻が認められるかな・・・とは思います。
また、売上高の数字が低くなることによって、銀行借り入れをしようとする際に不利になります。というのも、銀行の審査では利益よりも売上の数字が重視されるからです。
仕訳 その2:支払手数料とみなす
もうひとつは、Amazonプロモーション割引額を「支払手数料」とみなす方法です。
Amazon販売手数料、出荷作業手数料、カテゴリー成約料などは「支払手数料」で処理しますが、プロモーション割引額もこれに入れてしまおうという考え方です。
この場合、税務調査で狙われることはまずありません。
理由は、税務官にとってメリットがないからです。
ちなみに私はこちらの方法で処理しています。
支払手数料の仕訳
割引分を支払手数料で仕訳します。
マネーフォワード クラウドでは、次のような処理になります。
貸方(右側)
貸方は、先ほどの売上割戻のときと同じです。
借方(左側)
借方は、先ほどの売上割戻で「売上高」だったものを「支払手数料」にするだけです。
メリット・デメリットは、売上割戻とみなす場合の裏返しです。
支払手数料とみなすメリット
- 税務調査で指摘される心配がない
- 金融機関から融資を受けやすくなる
Amazonプロモーション手数料を「支払手数料」で処理していることについて、税務官から指摘される心配はまずないと考えられます。税務官にしてみれば、「支払手数料(=費用の増加)」を「売上割戻(=売上の減少)」に修正させるメリットがありません。
また、売上割戻とちがって売上高を高く見せることができるので、銀行からの信用が高まり借り入れがしやすくなります。
せどり、輸入などの物販ビジネスは結局のところ「資金力」勝負ですので、今後利益を伸ばしたい方はこのことを頭に入れておいてもいいと思います。
支払手数料とみなすデメリット
デメリットとしては「年間売上1,000万ぎりぎりの場合、そのラインを超える可能性がある」という点があります。
Amazonプロモーション割引額を「売上割戻(=売上の減少)」で処理しないと、売上高は送料を含んだ金額になるので、その分大きくなります。
まとめ
結論としては、免税事業者の方で
- 税務調査が心配なら:「支払手数料」で処理する
- 税務調査のリスク覚悟で売上高を抑えたいなら:「売上割戻」で処理する
ということになります。
いずれの仕訳処理にせよ、その年の納税額はまったく同じです。
参考:確定申告ツール「マネーフォワード クラウド」について
私も使っている確定申告ツール「マネーフォワード クラウド」は、直感的な操作で、素早く、簡単に確定申告することができます。
マネーフォワード クラウドは、年間50件までの仕訳であれば、30日間無料で使えます。
試しに使ってみてもし合わなければ、使用をやめれば料金は1円もかかりません。
» 参考:マネーフォワード クラウド公式サイト
マネーフォワード クラウドについてのレビュー記事はこちらです。
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参考:課税事業者だとどっちがいいの?
ちなみに、課税事業者は「売上割戻」と「支払手数料」のどちらを選択しても納める消費税は同じです。
「売上高」も「支払手数料」も課税対象なので、これらにかかる消費税は相殺されます。
簡単な例をあげます。(消費税率10%とする)
- 仕入値:330円(税:30円)
- 商品代金+送料:1,100円
- プロモーション割引額:110円
- Amazon手数料:220円
- 入金額:770円
売上割戻で処理する場合
売上高 110(税:10) / 売上高 1,100(税:100)
支払手数料 220(税:20)
売掛金 770(非課税)
仮払消費税 = 30 + 20 = 50円
仮受消費税 = 100 ー 10 = 90円
よって、
納付税額 = 仮受消費税 ー 仮払消費税 = 40円
※詳しい計算方法が知りたい方は、「課税仕入」「課税売上」などで調べてみてください。
支払手数料で処理する場合
支払手数料 110(税:10) / 売上高 1,100(税:100)
支払手数料 220(税:20)
売掛金 770(非課税)
仮払消費税 = 30 + 20 + 10 = 60円
仮受消費税 = 100円
よって、
納付税額 = 仮受消費税 ー 仮払消費税 = 40円
結論:どっちも同じ
というわけで、課税事業者の場合、納める消費税額はどちらも変わりません。
他のブログの中には、このことを勘違いしている方もいるので要注意です。(税理士とかに相談せずに独自の考えで記帳されているのかも?)
会計規則に則って正しく記帳・確定申告をして自分のお金を守ることが大切です。